農地と生活者


 「農業者の年齢構成と耕作破棄地」でもふれたとおり、農業者の人口構成は大きな問題である。何が問題なのかは、以下の表を眺めながら20年後の農業を想像すれば分かるだろう。



  農業者の高齢化−年齢別農業従事者数(2005年)
  本川 裕
  http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/0530.html



 経済危機が深まるにつれて失業者を人材不足である農業に誘導しようとする動きが強まっている。しかし、農業で生計を立てるには経営力が必要で、農業で生計が立てられる経営力がある人はすでに他分野で成功している場合が多いのがツライところである。


 さて、ここで見方を変えてみよう。


 「農業」の未来は真っ暗だが、優秀な若き農業者の未来は明るいといえよう。農業者が極端に減る近未来は、消費者に対し供給者(農業者)が有利となる場面が増えると思われるからだ。


 いま農業に参入するならば、20年後の需給関係をイメージしながら参入すると上手く行くのではないか。現場の環境はキビシイし、労働も単純でキツイが、未来のビジョンを描きながら経営力と生産技術を磨いてゆけば、やがて大きな実を得るだろう。


 さらに視点を変えれば。


 「農業」ではなく「農産物の生産」に視点を移すと、若い世代による「農産物の生産」の裾野は広がっているようだ。「自宅の庭やベランダ」または「市民農園」などで農作物を栽培する若い層が拡大しているようなのだ。おそらくこの流れは今後も大きくなるだろう。


 つまり、「農業」そのものをビジネスとする方向もあるが、生活者が農作物の栽培に触れる方向でのビジネスもあるだろう。それは生活者にとって使い勝手のよい「市民農園」を運営することであったり、「自宅の庭やベランダ」での農作物の栽培方法伝授し栽培キットを販売することであったり、それら「キッチンガーデン」愛好家のコミュニケーションの場を提供することであったり … と様々なアイデアが浮かぶはずである。


 いま必要とされている仕事とは、生活者と農地との新たな関係をデザインする仕事ではないだろうか?

 というわけ、「食糧自給率をなんとかしなければ」と一度でも考えたことがある都市住民の方は、まずは「キッチンガーデン」を初められてはいかがでしょうか。