食糧自給率あれこれ


 ニュースなどで食糧自給率の話題をよく目にするようになった。「日本の食糧自給率が4割を切って大変だ」ということである。


 ところで食糧自給率にはカロリーベースと生産額ベースがある。平成17年度の食糧自給率は、カロリーベースで39%、生産額ベースで69%となっている。


 カロリーベースの食糧自給率都道府県別でみると、東京都1%、大阪府2%から、秋田県174%、北海道195%までばらつきがある。さらには生産額ベースの食糧自給率でいうと47都道府県中24道県が100%を超えている。


 ようするに、食糧は地方で生産し都市が消費するのが基本的なスタイルで、問題は「日本の食糧自給率が4割を切って大変だ」ということではなく、「都市をどう食べさせるか」ということである。


 地方・農村が生産した食糧と人間を都市が消費する、というのが今も昔も基本的なパターンである。現代日本の人口は“人口容量”に達しているため都市化が進み調整段階に入っている。都市住民はモノを消費しつつ自らをも消費している存在だ。


 地方・農村は生産が基調であるが“人口容量”に余裕が出るまでは生産を強めるようなトレンドは生まれない。しかしすでに日本の人口はピークを過ぎて減少に転じている。したがって今後は“人口容量”に余裕が生まれるにしたがい、生産を基調とする地方・農村の回復が底流に現れ拡大することが予想される。日本は人口減少に転じたため、逆に食糧自給率は上昇を開始するのではないかということである。


 また国際社会は戦国時代に突入しつつあるため各国のナショナリズムが強まっており、エネルギー・ナショナリズムの次には食糧・ナショナリズムが現れることが予想される。世界情勢も食糧自給率の上昇を後押しするだろう。


 今後は地方・農村では回復基調が現れるが、都市は縮小基調が現れるだろう。都市住民のうち弱者には特に厳しい時代に突入するといえる。確か昨年の地球白書の主要テーマのひとつが都市農業だったが、今後の日本でも重要なテーマとなるのではないか。