震災前、「原子力発電所」をどう考えてきたか まとめ


 震災から2カ月が経過しようとしている。被災地への対応も初動段階から復興段階へと変わりつつある。ただし、福島第一原子力発電所の事故については収束の目途が立たず、復興の最大の阻害要因となりつつある。この厄介な「原子力発電所」に対する自分なりの考え方を整理しなければ“前に進めない”感覚があるため、それらの考え方を整理してゆく。


 今回は当ブログで「震災前、「原子力発電所」をどう考えてきたか」を4回に分けて振り返ったのでその内容をまとめる。


1番目(2007年10月):中部電力浜岡原子力発電所


 当ブログで「原発」に関して初めてエントリーしたのは、2007年10月に中部電力浜岡原子力発電所の運転差し止めの要求が認められなかったことに対する次のエントリーでした。


 2007-10-28 原子力発電所が安全ならば都市に作るべき
 http://d.hatena.ne.jp/Farmers_Energy/20071028/p1

 地元住民らによる中部電力浜岡原子力発電所の運転差し止めの要求は認められませんでした。

 地震が起こる確立が高いとされている地域で原子力発電所を運営してゆくことは、安全性はもちろん経済性の面でも疑問です。

 7月の新潟県中越沖地震で被災した柏崎刈羽原子力発電所の復旧はいつになるのでしょうか。復旧までの機会損失と、復旧にかかるコストは如何ほどなのでしょう。地震大国である日本にとって、原発は本当に経済的なのでしょうか?

 もし仮に、安全性にも経済性にも問題がないのであれば、今のように地方ではなく都市のど真ん中に原子力発電所を作るべきです。需要地域に供給施設を設ける方が送電コストが少なくなるので経済的です。なにしろ安全性に問題がないわけですから、なんら問題はありません。

 なぜその様な事が議論さえ行われないのか。都市で消費するエネルギーを生むために、信用のない原子力発電所を地方に押し付ける、それは都市のエゴではないのかと感じざるを得ません。


 今読むと直情的なエントリーで恥ずかしいが、「地震大国である日本にとって、原発は本当に経済的なのでしょうか?」という論点と「都市で消費するエネルギーを生むために、信用のない原子力発電所を地方に押し付ける、それは都市のエゴではないのかと感じざるを得ません。」という視点を持っていたことがうかがえる。


2番目(2008年6月11日):六ヶ所村・再処理工場


 当ブログで「原発」に関して2番目にエントリーしたのは、青森県六ヶ所村の使用済核燃料再処理工場の直下に断層がある可能性があるという話でした。


2008/06/11 六ヶ所村・再処理工場の直下に活断層か、M8の恐れも
http://d.hatena.ne.jp/Farmers_Energy/20080611/p1

 日本原燃の使用済み核燃料再処理工場の直下1キロ・メートル(マジ!?)に断層がある可能性が高いとのこと。
 日本に断層のないところってあるのか?
 日本列島の周りには3つだか4つだかのプレートがそれぞれぶつかり合っているらしいので、断層なんて探せばいたるところにあるのではなかろうか。
 そもそも原発って燃料も輸入モノだし … 日本にマッチしているのかな。


 中部電力浜岡原子力発電所と同様に「原発地震」に関するエントリーでした。ただし津波に関する意識はなく、新潟県中越沖地震で被災した柏崎刈羽原子力発電所のイメージが強かったことから、直下型の地震の可能性に反応したものだ。


 また、1番目のエントリーから半年以上経過しているわけで、「原発地震」に対する関心は低かったと言わざるを得ない。


3−6番目(2008年6月26日〜2008年8月20日


 当ブログで「原発」に関して3-6番目にエントリーしたのは次の通り。否定的にはとらえているが、水力や地熱との比較で触れているだけだ。


多目的ダムは作れるだけ作ったほうがよい
http://d.hatena.ne.jp/Farmers_Energy/20080626/p1

 道路や原発つくるなら多目的ダムと中小水力利用を意識した水路を全国的に整備して欲しい。政治家さんとしても地元への利益誘導なら道路じゃなくて水路でもいいはずですよね。上流には多目的ダムを設置、広域で中小水力利用を意識した水路を整備、ついでにマイクログリッドを整備してくれれば歴史に名を残すのではないかと思います。<<


東京電力】9月に電気料金値上げか
http://d.hatena.ne.jp/Farmers_Energy/20080628/p1

 料金改定ということですが、値上げですよね。理由は、柏崎刈羽原発の停止及び原油価格の高騰分を内部で吸収しきれなくなったためのようです。
 原発が止まって原油が上がれば値上げは仕方ないわけで、そろそろ水力にスポットライトを当ててみてはいかがでしょうか?


Google地熱発電に1000万ドル投資
http://d.hatena.ne.jp/Farmers_Energy/20080820/p1

 NHKでドラマ化された「ハゲタカ」作者・真山仁さんの著作に「マグマ」がある。これは外資系ファンドが地熱発電の潜在能力を認め、地熱発電をキーに国内のエネルギービジネスに切り込もうとするお話である。
 「安い石油がなくなる」時代、原発への依存を強める日本国において地熱発電を武器にエネルギービジネスに乗り込もうとする際の障害が描かれていて面白い。その中でRPS法や原発利権など、日本国内のエネルギー事情が説明されてゆく
 さて、そんな地熱発電の研究開発にGoogleが1000万ドル投資をするそうだ。


 原発直下型地震に対するリスクを想定し、再生可能エネルギーに投資を振り向けるべきだという意識がうかがえる。


 残念ながら原発への警戒感は以後薄れてゆくことになります。


7〜11番目:2009年3月12日〜2011年2月2日


 当ブログで「原発」に関して7〜11番目にエントリーしたのは次の通り。原子力発電所のリスクに対する意識は低く、コスト的な問題のみ触れている。


エモーショナルなエコ・イベントは苦手
http://d.hatena.ne.jp/Farmers_Energy/20090312/p1

 また分散型の新エネルギーは地方(農村)で展開されるべきであり、都市には原発などの大規模で効率的なエネルギー源が必要であることも再認識しておきたい。。


地球環境イニシアティブのシンポジウムに参加 2
http://d.hatena.ne.jp/Farmers_Energy/20090406/p1

□電源(発電原価/燃料費割合)
   原子力 (9円程度/2割程度)
   LNG火力 (9円程度/5割程度)
   石炭火力 (10円程度/3割程度)
   石油火力 (10円程度/6割程度)
   一般水力 (13円程度/0)
   地熱 (16円程度/0)
   風力 (16円程度/0)
   太陽光 (67円程度/0)

  長期的に安定かつ低廉な水力
  http://d.hatena.ne.jp/Farmers_Energy/20071116/p1
 注)数字が古いので現在では太陽光はもっと安いと思う

 なぜ経産省が燃料費割合がゼロの「更新性資源」のうち発電原価が一番高い太陽光発電を「固定価格買取制度」の対象にしたかというと、産業育成と雇用創出といった公共事業的側面が強いと思われる。
 太陽光発電が普及した後には発電原価は半分以下になると想定されている。また太陽光の設置、およびメンテナンス事業は人材がダブついている建設業の新たな収益源に期待されている。
 これまで推進されてきた原子力発電効率が良すぎて雇用人数が少なすぎるのが難点。要するに原子力では景気対策にならない。
 国や経産省は、基本的に税金投入ゼロ、制度設置のみで“グリーンニューディール”が実施できる「固定価格買取制度」がスマートであると考えている。「固定価格買取制度」については、これまでは東京電力などの電力事業者の反対で実現しなかったが、柏崎刈羽原発の事故、前年の石油高騰、世界金融危機を背景に業界の反対を押し切ったかたちだ。
 これまで国が推進してきた原子力の原価(9円程度)は「理想的な条件」が整ったときの数字だと思われる。柏崎刈羽原発の事故や、プルサーマル計画の進展状況などをみると、本当はもう少し高いのではないか。


「(小水力は)極めて大きな意味を持つ」 麻生総理
http://d.hatena.ne.jp/Farmers_Energy/20090618/p1

 日本国のエネルギー施策は今後、原子力、太陽光、水力を軸に組み立てられてゆくでしょう。そしてスマートグリッドが中山間村や離島など“末端”から徐々に導入されて行くことになり、そこでは地熱、風力、波力、バイオマスマリンバイオマスなども地域特性に合わせて導入されて行くことになるでしょう。


海からウラン
http://d.hatena.ne.jp/Farmers_Energy/20090629/p1

 原発の弱点は、燃料が枯渇性資源である点です。つまりピーク・ウランが起きてしまうのが根本的な問題点というわけですね。


環境系の人が語るスマートグリッドってよく分からない

 そもそも遠くに運ぶなら 原発+高圧線 が効率的じゃないの?

ビルゲイツさんが原子力発電所ベンチャーをしていた
http://d.hatena.ne.jp/Farmers_Energy/20110202/p1

 要するに、困りものの使用済核燃料を新技術で燃費よく燃やしちゃうというものですね。しかも人手を使わずに。実用化までは多額の資金が必要ですが、成功してほしいなぁ。


 残念ながら、2009年3月以降のエントリーからは2007年10月には持っていたはずの“地震原発”という視点は強くは感じられない。


まとめと反省


 震災直前、当ブログでは「分散型の新エネルギーは地方(農村)で展開されるべきであり、都市には原発などの大規模で効率的なエネルギー源が必要であることも再認識しておきたい。」という考えを持っていた。


 一方で、当ブログ開設の目的は下の通り「農家の継続性」をエネルギー供給面から考えようというものだった。


なぜ農村のエネルギーの自給を考えるのか
http://d.hatena.ne.jp/Farmers_Energy/20070924/1191109407

現代の農業は石油や電気(広域)に依存しており、昨今の原油価格の高騰は農業にダメージを与えつつあります。次世代(30年後)の農業はこの様なリスクを負わないよう、その方策がないものか考えてゆきたいと思います。

都市とは違い農村では効率性よりも継続性が重視される場面が多くあります。農家における継続性の観点からすると、各農家でエネルギーを生産し、需要が供給を上回る場合には支援を受けるという仕組みが必要となる時がくるのではないでしょうか。

50年後、原油やウランなどの価格が高騰した時に、私たちの子供が農業を続けられないといったことがない様に、今から体制を整えておくべきだと思うのです。

というわけで、まずは情報収集しなければなりませんので、この様なブログを立ち上げてみました。


 東日本大震災における福島第一原子力発電所の事故は、放射性物質による土壌汚染という最悪の事態を引き起こした。これは当ブログ開設の目的である「農家の継続性」にとっては受け入れがたい事態といえる。今回の事故による各種避難地域の農家の継続性は絶たれており、現時点でも復興の目途は立っていない。またその周辺地域の農家も多くの損害を被っている。


 「農家の継続性」を考えるとき、放射性物質による汚染は受け入れがたい事態であることは論をまたないだろう。当ブログに欠けていたのはその認識であるといえる。これまで当ブログは、放射性物質の放出と拡散による汚染とその被害が現実のものとなることについては一度も考えてこなかった。なぜ、そうなったのか。反省を込めて、これから考えてゆかなければならないだろう。



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