環境系の人が語るスマートグリッドってよく分からない


自給自足と地産池消


 「自給自足」と「地産池消」は意味が違うと思うのですが、同じ意味で使われる場合が多いようですね。ちなみに私は、「食糧とエネルギーの地産地消」は賛成だけれど、「食糧とエネルギーの自給自足」には反対です。


 私の「自給自足」と「地産池消」の言葉の使いかたは下の通り。


  自給自足 : 消費するのは自分で生産したものだけ
  地産池消 : 地域で生産したものは(なるべく)地域で消費しよう


 つまり「自給自足」は自分で生産したものだけを消費するのに対し、地産池消は地域で生産したものは(なるべく)地域で消費しましょうという意味で、もちろん他地域の生産物を消費するのも構わないし、自地域で生産したものが他地域で価値があるならば流通させるのもアリという意味で使っています。




環境系の人が語るスマートグリッドってよく分からない


 というわけで、次の文章が意味するところがよくわかりません。



 日本版グリーン革命で経済・雇用を立て直す
 株式会社 洋泉社

 P78 飯田哲也氏 曰く

 グリーン・ニューディールが実現した社会の姿として、エネルギーの地産池消で、地域ごとにエネルギーを自給する社会を予想する人がいます。(略)私はそうした考えには疑問をもっています。


 *中略*

 
 せっかくネットワークでつながっているエネルギーを地産地消する必要はありません。それはむしろ地域や自然エネルギーの可能性を小さく閉じ込めることになります。


 *中略* 


 現在、日本のエネルギー業界は、強力な権力構造の上に成り立っています。


 *中略* 


 自然エネルギーが普及するとこうした権力構造は崩壊せざるを得ず、「分散型」エネルギーに向かいます。分散型エネルギーというのはお互いにネットワークでつながっていて、情報をやりとりできるインターネット型のエネルギー形態なのです。

 だからこそ地産池消という美名のもとで、タコツボのように物理的に囲い込む考えは、ミスリーディング=誤解を招くのです。地域分散型・地域分権型のエネルギー社会を目指すことが重要です。

 たぶんネットに触れたことのある技術者は、氏の文章の意味が理解できないのではないかと思います。少なくとも私は、混乱しました。


 飯田氏がいう「インターネット型のエネルギー形態」は「スマートグリッド」のことを意識していると思うのですが、スマートグリッドのようなネットワーク設計の基本は「余計なトラフィックは生まない」ということだと思うのです。


 たかが情報でさえ「余計なトラフィック」を徹底的に嫌うのに、エネルギーならばなおさらだろうと考えてしまいます。スマートグリッドの存在意義を考えたときにまず浮かぶのは、エネルギーにおけるトラフィックの最適化なんだろう、と考えるわけです。そして、エネルギーにおけるトラフィックの最適化とは、需給の“距離”を短縮する方向に進むと考えるわけで、それは地産池消ということなのだろうと考えます。


 スマートグリッドとは、トラフィックの最適化を目的に、需要を制御し、需給の“距離”を短縮するために情報を駆使するのだろうと想像しているわけです。


 決定的に理解不能なのは以下の文章ですよね。

 せっかくネットワークでつながっているエネルギーを地産地消する必要はありません。


 地産地消可能なエネルギーを、遠くに運ぶメリットって何?
 それに必要なトラフィックは無駄では?
 そもそも遠くに運ぶなら 原発+高圧線 が効率的じゃないの?
 それとももう室温超伝導物質が安価で普及してましたっけ?


 飯田氏は、“地産地消ユートピア”と語っています … 私には氏の真意が分かりません。



 なんだか環境系の方が語るスマートグリッドのお話は、正直、よく分からんことが多いです。やっぱりスマートグリッドはIT系技術者の出番なのではないかと思いますね。
 

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