交易損失が拡大しているのに貿易黒字が拡大している理由


 asahi.comによると、5月の国際収支は2兆6億円の黒字だそうです。



経常黒字幅、3カ月連続で縮小 5月の国際収支
http://www.asahi.com/business/update/0710/TKY200807100046.html

 財務省が10日発表した5月の国際収支(速報)によると、海外とのモノやサービスの取引状況を示す経常収支の黒字は前年同月比で5.9%減の2兆6億円となり、3カ月続けて黒字幅が縮小した。

 米・欧州向けの輸出は減少したがアジア向けの輸出が増加し、貿易収支の黒字幅は前年同月比6.3%増えた。しかし、海外投資の収益状況を示す所得収支の黒字が12.6%減少した。

■まとめ


 原油高だ!
 食糧危機だ!


 などと騒いだところで、日本国全体で見るとアジア向けの輸出が増加しているため、貿易黒字は6.3%も拡大しています。


 資源高の影響で交易損失は拡大しているのに、貿易収支の黒字幅が拡大しているというのは不思議ですよね。



 「交易利得・損失」と「貿易収支」との関係がやっぱり分からない
 http://d.hatena.ne.jp/Farmers_Energy/20080627/p3


 交易損失が26兆円なのに貿易収支が黒字って?
 http://d.hatena.ne.jp/Farmers_Energy/20080626/p5




 でも、これ↓を読んで理解できたような気がします。
 


 交易損失26兆円の謎 〜貿易黒字は交易損失と連動しているのか
 keizai report.com
 http://www3.keizaireport.com/jump.cfm/-/ReportID=74114/



 これ↑を簡単に“勝ち組み”と“負け組み”を軸にまとめると下の通り。



□勝ち組み:輸出産業


 ・基本的に輸出産業は、円安を背景として、新興国への輸出が拡大し好調である

 ・交易損失の拡大は、輸出が好調で増加している面が強い

 ・多国籍企業現地法人を持っているため、日本法人の交易損失を現地法人の交易利得でカバーしている(企業内貿易)



□負け組み:非輸出産業


 ・現在の交易損失の拡大は原油高、資源高によってもたらされている

 ・非輸出産業は交易損失をカバーする手段がない

 ・したがって原油高、資源高が直撃している



 つまり交易損失が26兆円なのに貿易収支が黒字である理由は、交易損失の拡大を輸出の拡大が上回っているからであり、さらに輸出の拡大が交易損失の拡大をもたらしている面さえあるというわけである。


 交易損失の拡大に直撃されているのは非輸出産業である。


 とすると「農業も輸出せねば!」とか考えちゃうけど、それは間違いだと思うのはナゼだ?




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 2008年5月の貿易収支は3656億円の黒字
 http://d.hatena.ne.jp/Farmers_Energy/20080625/p3


 日本の「交易利得・損失」が26兆円のマイナス
 http://d.hatena.ne.jp/Farmers_Energy/20080625/p2