廃水からリン回収
生活廃水、工業廃水等の有機性廃水には枯渇が懸念されるリンが含まれている。この有機性廃水を浄化する過程でリンを回収できれば、キレイな水とリンが取得できて一石二鳥である。そんな技術がNEDOで研究されていたのでその報告をまとめておく。(原文は下に掲載)
■汚泥減容化とリン回収 NEDO
□研究目的
生活廃水、工業廃水等の有機性廃水の処理は次の課題を抱えている。
【有機性廃水処理の課題】
1.処理エネルギーの削減
2.窒素、リン等も除去した処理水の取得
3.廃水に含まれるリンの回収
4.処理過程で発生する廃棄物(余剰汚泥)の処理・処分
「汚泥減容化とリン回収」の研究はこれらの課題への解決法を研究するものである。
□生物処理
有機性廃水を生物処理することで課題の解決を図る。この生物処理のプロセスは、BOD、窒素、リンを同時に除去できる嫌気-無酸素-好気法とする。このプロセスでは、リン蓄積細菌、硝化菌、脱窒菌などの多種の微生物を活動させる。
【BOD】微生物で分解可能な有機物
【リン蓄積細菌】一般の微生物に比べて菌体内のリン蓄積能力が数倍ある微生物
【硝化菌】アンモニア性窒素を硝酸性、亜硝酸性窒素に変換する微生物
【脱窒菌】硝酸性窒素や亜硝酸性窒素を水中の有機物で還元して、窒素ガスに変換する微生物
□生物処理のプロセス
生物処理のプロセスは下記の通り。
1.BODを微生物(リン蓄積細菌、脱窒菌)の
働きで炭酸ガスと水に分解
2.アンモニアなどの窒素を微生物(硝化菌と脱窒菌)の
働きで窒素ガスにして水中から除去
3.リンは主にリン蓄積細菌で除去
□処分余剰汚泥の処理
また、これまでは処分余剰汚泥(微生物の集合体)を埋立て処理していたが、これをオゾン処理した上で生物処理槽に戻すことで槽内の微生物のエサとし、最終的には炭酸ガスと水に分解する。
□効果
今回の生物処理のプロセスでは下記の効果が得られる。
1.余剰汚泥がほとんど発生しない(従来法に比べ90%削減)
2.オゾン処理過程で発生する酸素を有効利用してエネルギーを節減
3.リン蓄積細菌、リン回収リアクターなどを利用しリンを回収
4.窒素、リン等も除去した処理水の取得
□リンの回収について
リンの回収についてNEDOの資料では下記の通り記している。
リン蓄積細菌は、好気槽ではリンを菌体内に取り込みますが嫌気槽で菌体からリンを放出します。そのため、嫌気槽でのリン濃度は、原水の2〜3倍となります。このリン濃度の高い上澄液を微生物と分離し、リン回収リアクターでHAP(ヒドロキシアパタイト)の結晶として回収します。
世界的にもリン資源は枯渇の危機感があり、日本ではリン鉱石がとれず全てを輸入に頼っています。そのため廃水などからリンを回収して、再資源化することが期待されています。
廃水中からリンを回収するHAP晶析法は、リンを含有する廃水に、必要に応じてカルシウムイオンと水酸化物イオンを添加すると、脱リン剤の表面で晶析反応が進み、リン鉱石の主成分であるHAPが得られることを利用するものです。
要するに、リンを含む廃水にカルシウムイオン等を添加するとリン鉱石の主成分であるHAPが得られる。またこの作業を行う前にリン蓄積細菌を使いリンの濃度を上げておく、ということである。
汚泥減容化とリン回収 NEDO
http://www.nedo.go.jp/expo2005/ecodrain/c02.html
研究目的
現在、有機性廃水の処理では、処理に要するエネルギーを削減しながら、窒素やリンまでも除去された高度な処理水を得ること、処理過程で発生する廃棄物(余剰汚泥)の処理・処分が課題となっています。
また、廃水中には枯渇が心配されているリンが含まれています。
処理全体としての省エネルギーエネルギー削減率: 40%
発生する有機性余剰汚泥の大幅な削減削減率: 90%
廃水に含まれるリンの回収
研究内容
生物処理のプロセスは、BOD[注1]、窒素、リンを同時に除去できる嫌気-無酸素-好気法とします。
このプロセスでは、リン蓄積細菌[注2]、硝化菌[注3]、脱窒菌[注4]などの多種の微生物が活動しています。廃水中のBODは微生物(リン蓄積細菌、脱窒菌)の働きにより、炭酸ガスと水に分解されます。同様に、アンモニアなどの窒素は微生物(硝化菌と脱窒菌)の働きにより、窒素ガスになることで水中から除去されます。廃水中のリンは主にリン蓄積細菌で除去されます。生物処理では汚水を浄化する過程でこれらの微生物が増え、生物処理の安定化のために余剰汚泥(微生物の集合体)として処理系外に排出されます。従来は、汚泥処理(脱水や焼却)を行った後、埋め立て地などで処分していました。
この技術開発ではオゾンによる汚泥減容化工程で、生物処理系の微生物の一部にオゾン処理を行いますと、オゾンの酸化力によって汚泥の一部分は分子量の小さい有機物に変換し、結果的には生物処理系の微生物の「えさ」となることが可能となります。そこで、オゾン処理した汚泥(低分子化した有機物を含む)を生物処理槽に戻し、槽内の微生物によって、さらに炭酸ガスと水に分解します。
この結果、余剰汚泥の発生量がほとんどどない(従来法に比べ90%削減できる)生物処理が可能となります。さらに、開発したプロセスでは、オゾン処理過程で発生する酸素を好気槽に有効利用することでばっ気動力のエネルギーを節減しています。
リン蓄積細菌は、好気槽ではリンを菌体内に取り込みますが嫌気槽で菌体からリンを放出します。そのため、嫌気槽でのリン濃度は、原水の2〜3倍となります。このリン濃度の高い上澄液を微生物と分離し、リン回収リアクターでHAP(ヒドロキシアパタイト)の結晶として回収します。
[注1]BOD:微生物で分解可能な有機物のこと
[注2]リン蓄積細菌:一般の微生物に比べて菌体内のリン蓄積能力が数倍ある微生物
[注3]硝化菌:アンモニア性窒素を硝酸性、亜硝酸性窒素に変換する微生物
[注4]脱窒菌:硝酸性窒素や亜硝酸性窒素を水中の有機物で還元して、窒素ガスに変換する微生物
世界的にもリン資源は枯渇の危機感があり、日本ではリン鉱石がとれず全てを輸入に頼っています。そのため廃水などからリンを回収して、再資源化することが期待されています。
廃水中からリンを回収するHAP晶析法は、リンを含有する廃水に、必要に応じてカルシウムイオンと水酸化物イオンを添加すると、脱リン剤の表面で晶析反応が進み、リン鉱石の主成分であるHAPが得られることを利用するものです。