小水力発電普及に関し全国小水力利用推進協議会が要望書

□事象


 小水力利用推進協議会は「小水力発電電力の買取り価格長期保証制度の導入に関する要望書」(11月9日付)を内閣官房長官など関係者に提出した。この要望書は、出力1000kW以下の水力発電で発電した電力について、優遇価格での長期買取りを要望するもの。


 出力1000kW以下の「小水力発電」は、他の「新エネルギー」に比較して、(1)単位発電量当たりの温室効果ガス排出量が少ない、(2)発電出力の変動が著しく小さい、(3)設備利用率(稼働率)が高い、などの利点がある。


 要望書では、この「小水力発電」を本格的に普及させるためには、関係者にインセンティブを与え、民間の技術開発を刺激し、民間資金の誘導を促すことが不可欠であるとし、初期投資の回収に長期間を要すことに配慮した制度支援が求められることから、現行のRPS制とは異なるドイツ型フィードイン・タリフ制のような電力料金の長期保証が担保される制度導入が必要であるとしている。


■まとめ


 本家のドイツ型フィードイン・タリフ制の太陽光発電システムに関する施策は、コストが高すぎることがリスクといえるのではないか。これと比べて、市場を意識している日本のRPS制が悪いとは思えないが、日本の場合は水力にターゲットを絞った“ドイツ型フィードイン・タリフ制”があっても良いとは思う。小水力発電太陽光発電よりは、長期的にはコストが低いだろうことが理由である。




水力発電電力の買取り価格長期保証制度の導入に関する要望書を出しました
http://energy-decentral.cocolog-nifty.com/mhp02/2007/12/post_c16c.html#more

全国小水力利用推進協議会では、11月9日付で表記要望書を作成し、関係方面あてに提出しました。
ドイツのフィードインタリフ制度に代表される、長期にわたる安定的優遇価格での買い取りを要望するものです。
要望書本文をダウンロード

水力協200711-01号
2007年11月9日

内閣官房長官 町村 信孝 殿
農林水産大臣 若林 正俊 殿
経済産業大臣 甘利 明 殿
国土交通大臣 冬柴 鐵三 殿
環 境 大 臣  鴨下 一郎 殿
自然エネルギー促進議員連盟会長 小杉 隆 殿

全国小水力利用推進協議会
会長 愛知 和男


水力発電電力の買取り価格長期保証制度の導入に関する要望

出力1000kW以下の水力発電(以下,「小水力発電」)(注1)は,他の「新エネルギー」に比較して,?単位発電量当たりの温室効果ガス排出量が少ない,?発電出力の変動が著しく小さい,?設備利用率(稼働率)が高い,一方で?設備・システムの整備/運用/維持・管理に水利〜エネルギー利用までの多様な関係者が必要となる,などの特徴をもつ純国産の再生可能エネルギーです。

この「小水力発電」を本格的に普及させるためには,関係者にインセンティブを与え,「小水力発電」にかかわる民間の技術開発を刺激し,民間資金の「小水力発電」事業への効率的な誘導を促すことが不可欠です。そのためには,とくに他の「新エネルギー」に比較して初期投資の回収に長期間を要すという点に配慮した制度支援が求められ,現行(注2)と形態が異なるドイツ型フィードイン・タリフ制(注3)のような電力料金の長期保証が担保される制度導入が必要と考えられます。

「全国小水力利用推進協議会」は,このような認識に基づいて「小水力発電」による電力販売を対象とした電力の買取り価格の長期保証制度の導入を強く要望するものです。開発ポテンシャルがあり,国策としての地球温暖化防止に寄与する再生可能エネルギーであるにもかかわらず有効活用できていない資源を開発するためには,将来的に適正なマーケットを形成する方向での国家レベルの施策展開が不可欠と考えられます。経済的に成立する条件が整うまでの「小水力発電」開発に関わる制度的支援方策として,ここに要望する電力の買取り価格の長期保証制度の導入をご検討いただきたくお願い申し上げます。

以上

添付資料


注1)「小水力発電(出力1000kW以下)」は本年度(2007年度)より,普及,技術・システム開発に政策的支援を必要とする再生可能エネルギーとして,太陽光発電風力発電バイオマスのエネルギー利用などと同様の「新エネルギー」に位置づけられました。「小水力発電」は,環境負荷が最も小さい発電方式といわれ,地球温暖化抑制に大きく寄与する再生可能エネルギーであり,農山村地域においてとくに開発余力が大きいエネルギー資源であるといわれています。しかしながら,「小水力発電」は,?単位出力当たり初期投資が大きい,?設備・システムの寿命が長いために事業期間が長期にわたる,?開発地点が限定されるために送配電設備コストが増加し易い,このため?初期需要が創出できない,?メーカー・投資者に対して魅力的な市場が形成されていないなどの理由で,開発ポテンシャルが高い地域においても,普及が大きく制約されています。また,わが国におけるエネルギー資源の独占的価格決定システムは,「小水力」のように小さくない初期投資を必要し,機器設備の普及・汎用化が未熟な発電方式の量的拡大の大きな障害になっています。

注2)「新エネルギー」の電力販売を支援する現行の下限設定方式の制度(RPS制)は,?事実上,独立事業者からの買取り量の上限が決められることにより市場が限定的になる傾向があること,?電力の買取り価格が現行の独占的価格決定システムに従属して決定され易いこと,?新らたな技術開発や対策が補助金に依存し易くなることなどの問題点を抱えているといわれています。このために,下限設定方式は,機器設備の汎用化や新技術導入を核とした新たなマーケット形成に適しているとは言い難く,とくに長期にわたる収支の確定が初期需要の創出,事業化・投資の必須要件となる「小水力発電」開発においては,有効に機能しないことが懸念されます。

注3)フィードイン・タリフ制(feed-in tariff)は,バイオマス利用,風力発電太陽光発電などの「再生可能エネルギー・システム」導入を促進・拡大するために,システム整備に関わる初期投資を一定期間内で回収できるように電力買取り価格を設定・期間内保証する制度で,初期需要が創出しにくい新規のエネルギー・システム導入にインセンティブを付与し,誘導的に新たなマーケットを形成しようとする経済的手法の一つです。ドイツでは、ほとんどの再生可能エネルギー生産システムに導入され,例えば太陽光発電システムについては初期投資額を20年で回収できるような買取り価格が設定されたことにより,設備導入が爆発的に拡大しています。フィードイン・タリフ制は,RPS制に比較して少ない社会的コストでより多くの効果が得られる制度として,ヨーロッパでは広く認められています。